「好きです」「あなたと一緒にいたい」
そんな言葉を、誰かから言われたらどう感じるでしょうか。
たとえ年齢を重ねても誰かに必要とされたい、誰かと心を通わせたいという気持ちはごく自然な人間の感情です。
ロマンス詐欺はまさに、その純粋な気持ちを巧みに利用して、お金を騙し取る非常に悪質な詐欺です。
ロマンス詐欺はこうして始まる
きっかけはとても些細なことです。
マッチングアプリや出会い系サイトで知り合った相手が、驚くほど誠実で優しい人物として現れます。
毎日欠かさず連絡をくれて、「あなたのことをもっと知りたい」「あなたと話していると楽しい」という言葉が続きます。
最初は警戒していても、気がつけば、毎日その人からの連絡を楽しみになってしまい、いつしか恋愛感情が芽生えてしまいます。
つまり、それはメールだけの連絡だけでも、相手に自分の心が奪われてしまい信じるようになってしまうのです。
これがロマンス詐欺という罠の始まりになります。
恋愛感情が判断力を奪う
優しい言葉を毎日のようにかけられると悪い気はしなく、いつしか相手のことが気になってしまうのは仕方ないことです。
そしてそれは、「この人だけは違う」「こんなに優しくしてくれる人が嘘をつくはずがない」という気持ちが、冷静な判断力をどんどん奪っていってしまいます。
誰かを好きになると、その人のことを信じたくなるという心理を、詐欺師は熟知していて騙すのです。
十分に信頼関係を築いたと判断したとき、詐欺師は初めてお金の話を切り出してきます。
「急に仕事でトラブルが起きて…」「手術が必要なのにお金が足りなくて…」と理由をつけて、お金を借りる言い訳を探します。
「仕事が成功したら必ず返すから…」と、安心させながらお金を借りようとするのですが、どれも作り話で最初から返すつもりなどありません。
しかしその時の私たちには、もうそれが嘘だとは思えなくなっているのです。
好きな人が困っているなら助けたい、という気持ちが先に立ってしまうからで、冷静な判断がなくなり相手の言いなりになって夢を見ているような感じになってしまいます。
被害はこうして大きくなる
最初は少額から始まります。
「5万円だけ」「すぐ返すから」という言葉に、ついお金を渡してしまいます。
ところが一度お金を渡すと、次々と新しい理由が出てきます。
「もう少しだけ」「これが最後だから」という言葉が繰り返されるうちに、気がつけば数百万円に膨らんでいたというケースも少なくありません。
しかも被害者の多くは、お金を渡している間も「この人は本物だ」と信じ続けています。
疑う気持ちが芽生えても、相手は巧みな言葉でその疑いを打ち消すように嘘を重ねてきます。
相手は突然いなくなる
お金を貸して、むしり取るだけむしり取って、相手がこれ以上お金を出せないと判断すると、ある日突然、連絡が取れなくなります。
LINEでメッセージを送っても既読すらつきません。
電話をかけても繋がりません。
その時初めて、騙されていたという現実に気づくことになります。
しかし後悔しても、渡したお金は戻ってくることはなく、相手とはメールだけのやり取りだけで、相手の住んでいるところさえもわかっていなかったのです。
相手はもともと存在しない人物であることも多く、名前も顔写真も全て偽物だったというケースがほとんどです。
残るのは、深い喪失感と、消えてしまったお金だけです。
シニアが狙われる
詐欺師がシニア世代を狙うのには理由があります。
退職金や長年の貯蓄など、まとまったお金を持っているからです。
そして、一人暮らしなどが狙われて、誰かと話したいという気持ちが強いことから、詐欺師のターゲットになるのです。
さらに、騙されたことを恥ずかしいと感じて家族や周りにも相談できず、被害が表に出にくいということになります。
詐欺師はそのすべてを計算した上で近づいてくるのですが、こんなことでよく騙されるものだと思うかもしれないのですが、彼らは単に『嘘』をつくのではなく、私たちの信じたいという気持ちを操作するプロだからです。
騙されないために大切なこと
ロマンス詐欺という、恋愛感情を利用して騙す手口から身を守る方法は実はシンプルです。
どんなに心が動いても、直接会ったことのない相手にはお金を渡さないということです。
これを絶対的なルールとして決めておいてください。
「好きだから信じたい」という気持ちはよくわかるのですが、本当に誠実な相手であれば、お金を無心することは絶対にありません。
「お金」の話が出た瞬間、それは詐欺と思って下さい。
好きな相手のためならばと思う気持ちは理解できても、お金を貸したりすることは、どんな理由があっても、どんなに悲しい事情を打ち明けられても、見ず知らずのSNSだけで知り合った人とは関わらない方がいいということです。
その一線が、あなたの大切な老後の資金と、心の平穏を守る唯一の盾になるのです。