おっちゃんシリーズ おっちゃんが教える|クレジットカードを盗まれたら最初に考えること
その日のおっちゃんは、いつものように窓際の席でコーヒーを飲んでいました。タケルがカウンターで仕込みをしていると、ドアが開いて見慣れない顔の男性が入ってきます。50代くらいでしょうか、疲れた表情でどこか落ち着かない様子です。「すみません、コーヒーを一杯もらえますか」男性は窓際のおっちゃんの前の席に座りました。しばらくすると、スマホを取り出して誰かに電話をかけ始めます。「ああ、俺だ。実はバッグを盗られてしまってな……交番で事情を説明してきたところだ。今、駅前の喫茶店にいるので迎えに来てもらえないか」置き引きに合うおっちゃんは、男性の話を聞くともなく新聞を読む手を止めました。電話が終わると、男性はため息をつきます。「大変でしたな」おっちゃんが声をかけると、男性は驚いたように振り向きました。「恥ずかしい話で……」男性は苦笑いしながら話し始めました。息子が大学入学のために東京に出てきたので、様子を見に来たのですが、駅を出たところで若い男に話しかけられて、目を離したすきに持っていたバッグを盗まれてしまったということです。「バッグの中には、クレジットカードも免許証も、それに息子の家の住所を書いたメモ...(本文へ)