「法律で義務化されました」は嘘です——太陽光パネル点検商法の手口

最近、太陽光パネルを設置しているお宅に突然業者が訪問してきて、「今年から太陽光発電パネルの点検が法律で義務化されました。無料で点検します」と言って上がり込もうとするトラブルが増えています。

国民生活センターには、このような訪問業者に関する相談が全国から多く寄せられているということです。

確かに、太陽光パネルを安全に使い続けるためには定期的な点検は大切なことですが、「義務化された」「無料で点検する」という言葉を使って、高額な修理契約を迫るケースがあることから十分に注意が必要です。

田中さん夫婦を襲った「突然の訪問者」

田中さん夫婦は、郊外の一戸建てで二人暮らしをしています。

夫は72歳、妻は68歳。子どもたちが独立してから10年が経ち、今は年金生活をしながら静かな日々を送っています。

13年前、電気代の節約と環境への配慮から、自宅の屋根に太陽光パネルを設置しました。

設置してからは大きなトラブルもなく、毎月の電気代が少し安くなったことを夫婦で喜んでいました。

業者の訪問

ある晴れた午後、玄関のチャイムが鳴りました。

スーツ姿の若い男性が立っていて、胸には会社のロゴが入った作業着を着ています。

田中さんのご主人が対応すると、男はこのように言ってきました。

「突然お伺いして申し訳ございません。太陽光パネルの安全点検でお伺いしました。実は昨年から法律で点検が義務化されまして、この地域のお宅を順番にご案内しているのです」

点検商法

法律で義務化という言葉に、ご主人は思わず姿勢を正してしまいましたが、実際には太陽光パネルの点検を義務化した法律は存在していません。

実はこのような「無料点検」を入り口にした悪質な手口は、太陽光パネルだけでなく、給湯器や配電盤なども同じように狙われています。

さらに、屋根瓦がずれているとか、蝙蝠が飛んでいるので屋根裏点検などしたいと訪問して家に上がり込み、「このままでは危険です」「修理しないと大変なことになります」と不安を煽って、高額な修理や交換契約を迫るという手口が横行しているのです。

確かに給湯器や配電盤は定期的な点検が大切ですが、しかし突然訪問してきた業者の「無料点検」には十分注意することが必要です。

「義務化された」「このままでは危険」という言葉を信じて家に入れてしまうと、最終的に高額な修理費用の契約を結ばされてしまうケースが後を絶たないのです。

手口の全体像

無料ならと、点検をしてもらうことを了承した田中さんでしたが、後日点検業者と称する作業服を着た人が二人で来ると、屋根に上って太陽光パネルや配電盤などを点検します。

そして、点検後、業者は深刻な顔で言います。

「太陽光パネルをサーモモニターで確認したところパネルが赤くなっています。このまま放置すると火災が起きる可能性があります」と、赤く示された写真を田中さんに見せました。

火災という言葉に田中さんは驚いて、自分の家から火事でも起きれば近所に迷惑がかかるといった恐怖心から、冷静な判断力を奪われてしまったのです。

発電パネルの横の安全装置を変えることと、発電効率を上げるためにパネルのクリーニングとコーティングをした方がいいと業者は勧めてきました。

妻の一言

業者は、部品の交換とパネルの洗浄代として40万円の費用がかかると説明してきます。

田中さんは、40万円という金額の妥当性を判断する余裕はなく、早くしないと火事になるという恐怖心から、わかりましたとい言いかけようとしたときに、横で聞いていた奥さんが口を挟んできました。

業者が契約書を取り出してサインを促そうとした時に、「ちょっと待ってください。サインする前に娘に聞いてみてもいいですか」と言いました。

業者は少し表情を変えながらも「もちろんですが、今日中に決めていただかないと特別価格が適用できなくなりますよ」と言い放ちます。

「実は私の娘の亭主が電力会社に勤めているので確認したいのです」

奥さんがそのように言ったことで、業者は「わかりました」と契約書をしまうと帰って行きました。

奥さんの判断

娘の亭主が電力会社に勤めているなどと言うのは奥さんがついた嘘でした。

奥さんとしては、何か怪しいと感じて止めたということです。

その夜、娘に電話すると娘はすぐにインターネットで調べてくれて、太陽光パネルの点検が法律で義務化されたという事実はないし、同じような被害が国民生活センターにたくさん報告されていることがわかりました。

田中さん夫婦は胸をなでおろしました。

後から考えると、ご主人も、なんだか契約を急かされている感じがしていたということでした。

奥さんの冷静さ

火災になるとか、法律で決まっているとかと言われると冷静な判断を失うことがあります。

今回、田中さん夫婦を救ったのは、奥さんの「なんだか気になる」という小さな違和感でした。

難しい知識はなくても、「急かされている」「なんだかおかしい」というその感覚を大切にしたことで騙されないですんだのです。

しかし、一人暮らしであれば、その場で一人で判断しなければならないし、業者の言いなりになって高い金額を払わなければならなくなるかもしれません。

そのような時は、すぐに返事をしないで誰かに相談するか、相談相手がいない時は、国民生活センターに電話して相談することをすすめます。

国民生活センター(局番なし188)

もし契約してしまっても、8日以内であればクーリング・オフという制度があり、無条件で解約解除することができます。

詐欺師は、法律で決まっているなどという権威性や、火災という恐怖心を煽ることで、すぐに契約に持って行こうとしますが、田中さんの奥さんが感じた小さな違和感は、長年の生活の中で培われた大切な感覚だったかもしれません。

その感覚を信じて「ちょっと待って」と言える勇気と、家族に相談するという習慣は、これは詐欺師が最も嫌がる行動です。

怪しいと感じたら、その日のうちに決めないことと、誰かに相談することなどを心がけてください。

あなたの中にある怪しいという感覚を信じることは、それがあなたの大切な財産を守る、一番確かな力になるのです。

そのためにも、日頃から詐欺に関する知識を知っておくことが重要です。