知らないということの怖さ——おっちゃんが語る無知が招く詐欺被害

その日のおっちゃんは、いつものコーヒーを飲みながら、スマホの画面をじっと見つめていました。

「タケル、ちょっといいか」

カウンターで仕込みをしていたタケルが顔を上げると、おっちゃんが珍しく困ったような表情をしていました。

「どうしたんですか、おっちゃん」

「Yahoo知恵袋にこんな質問が載っていてな」

おっちゃんは、タケルにスマホの画面を見せました。

「日本郵便の自動メッセージのようなものから電話があり、担当者とやり取りをしていました。全く知らない人に送った荷物が受け取られていないと言われたのですが、誰かに荷物を送った心当たりもなく、向こうで開封してくれるとのことでした。電話が途中で切れてしまったのですが、担当してくれた方にすごく申し訳ないので、かけ直したほうがいいのでしょうか」(Yahoo知恵袋のメッセージより)

タケルは画面を読み終えると、首をかしげました。

「これって、よくある詐欺の手口じゃないですか。投稿者はなんで気づかないんですかね」

おっちゃんは静かに首を横に振った。

「タケル、それが言えるのはお前が詐欺について、ある程度知っているからだ」

無知につけ込む詐欺師の手口

「『日本郵便です。お客様宛の荷物が届いています』とか『未払いの送料があります』という内容で電話をかけてくる」

「こちらが指示された番号を押すと、担当者につながるんですね」

「担当者を名乗る人物が出てくると、名前や住所などの個人情報を聞き出そうとする」

「それって、よくあるアポ電という詐欺ですよね」

「詐欺ということを知らなければ、普通の問い合わせ電話だと思ってしまう」

「今の時代に、そのような人がいるんですね」

タケルは、驚いたように眉をひそめた。

知識がない人ほど騙される

「でも、日本郵便が自動メッセージから担当者につなぐなんて、おかしいと思いませんか」

タケルの言葉に、おっちゃんはコーヒーを一口飲むと、

「アポ電詐欺について知らなければ、おかしいという発想すら生まれない」

タケルは少し考え込みました。

「確かに……知らなければ疑いようがないですよね」

「しかも、この人は電話の相手に対して申し訳ないとさえ感じている。これが知らないということの本当の怖さかもしれない」

おっちゃんはコーヒーを飲み干すと、静かに言葉を続けた。

「本来なら怒りを感じるはずの詐欺師に向かって、親切にしてもらったと感謝してしまっている。これは決して、その人が騙されやすい性格だとか、注意力が足りないということじゃなく、ただ、詐欺について知らないだけだ」

タケルは、その言葉の重みを受け止めるように、黙って深く頷きました。

おっちゃんは、確信するように言います。

「だからこそ大事なのは、詐欺というものはこういう手口があるという具体的な知識を持つことが大事なんだ」

詐欺を防ぐのは一人で判断しない

「この質問した人って本当に詐欺について何も知らなかったんですかね」

おっちゃんは静かに頷きました。

「おそらくそうだろう。この人の質問を読んでいると、詐欺という概念自体がピンときていない」

「詐欺だと知っている人なら、真っ先に疑いますもんね」

「そうだ。知識がある人は疑うことができる。しかし知識がない人は詐欺について疑うそのものを持っていない。だから詐欺師はその連中を探して騙そうとしているんだ」

タケルはしばらく黙って考えていました。

「じゃあ、この人はどうすればいいんですか」

タケルの問いに、おっちゃんはゆっくりと答えました。

「一人で判断しないことだな。だから、何かわからないことがあったときは、今回のように誰かに相談すればいいんだ」

知識はあなたと大切な人を守る盾になる

「今回の知恵袋の答えも、『これは詐欺だから、相手にしないこととである』と誰かが答えている」

「相談すれば、誰かが教えてくれるということですね。怪しいなと感じたら誰かに相談することが一番ということですね」

おっちゃんは、にっこりと何度も頷いた。

「おっちゃんはなんでそんなに詐欺のこと詳しいんですか」

おっちゃんは少し照れくさそうに笑いました。

「昔、詐欺サイトと知らずに3万円振り込んで騙されたことがある。それから詐欺について調べるようになったんだ」

「え、おっちゃんも騙されたことがあるからですか」

「あるよ。その時は知らなかったからだ。しかしあの経験があったから、今は詐欺の手口を知ることの大切さがわかる」

おっちゃんはタケルをまっすぐに見つめると、

「タケル、詐欺師は知識がない人を狙う。手口を知っている人間は騙しにくいからだ。だから知ることが最大の防衛策になるということだ」

「知識が詐欺を防ぐ盾になるってことですね」

「そうだ。そしてその盾は、自分だけでなく周りの大切な人も守ることができる」

今日のまとめ「無知が招く詐欺被害」

冒頭で紹介した知恵袋の質問者を、誰も責めることはできません。

詐欺の手口を知らなかっただけで、その人が悪いわけではないからです。

しかし、詐欺師たちは意図的に詐欺について無知な人間を狙ってきます。

詐欺の手口を知らない状態こそが、彼らにとって最も騙しやすい絶好の条件だからです。

知らないこと自体は、まったく恥ずかしいことではないのですが、知ろうとしないことは、自分だけでなく、あなたの大切な人をも危険にさらすことになるということです。

日々の生活の中で、小さな知識を少しずつ積み重ねていくことこそが、悪質な詐欺からあなたを守る確かな盾になるのです。

今日もおっちゃんは喫茶店でコーヒーを飲みながら、誰かの役に立てる知識を探し続けています。