大学を卒業して社会人になったばかりの23歳の女性のAさんは、ある日インスタグラムで大学時代の同級生の投稿を見かけました。
「最近、投資を始めて生活が変わった。興味ある人はDMして」
そこには、高級レストランや旅行先で笑う、同級生の姿が写っていました。
Aさんは社会人になったばかりで、将来への漠然とした不安を感じていたことから、友達が紹介しているなら安心かもしれないと、DMを送ったことがすべての始まりです。
友達という名の罠
同級生からLINEグループに招待されたAさんは、そこで投資のレクチャーを受け始めました。
グループには複数のメンバーがいて、「儲かった」「生活が変わった」という書き込みが続いています。
「社会人になったばかりだから、今から資産を作ることが大事」という言葉が、Aさんの背中を押すことにりました。
社会人として給料の中から貯めた150万円を振り込んだAさんのもとに、最初は配当金が入ってきました。
「本物だった」という安心感がAさんの心に広がったのです。
しかし半年後、配当金が突然止まりました。
同級生に問い合わせると、最初は言い訳が続き、結局のところ投資して振り込んだ150万円は、同級生の遊興費に使われていたということです。
戻してもらうように言っても、最後は「騙されるあんたが悪いのよ」と開き直った言葉を投げかけられました。
友達の裏切りに涙する
Aさんは、言葉を失いました。
信じていたのは、見知らぬ誰かではありません。
大学時代を一緒に過ごした、同級生だったからです。
「どうしてこんなことをするの」
そう問いかけても、返ってきたのは冷たく責任を逃れようとする言葉だけでした。
しかし実際には、その同級生自身もまた別の誰かから、簡単に儲かると言われ、人を紹介すれば報酬が入ってくると誘われていたのです。
150万円より重かったもの
Aさんが失ったのはお金だけではありませんでした。
信頼していた友人に裏切られたという現実と、社会人として初めて自分で貯めたお金を失ったという喪失感などです。
それに、誰にも相談できないという孤独感が、彼女の心を蝕んでいきました。
眠れない夜が続き、Aさんはうつ病を発症してしまい、せっかく就職した会社を休職しなければならなくなってしまったのです。
なぜ人は軽い気持ちで人を傷つけるのか
「騙そうとするつもりはなかった」
加害者になった同級生は、そう言うかもしれません。
しかし、150万円というお金が、社会人になったばかりの被害者にとって、どれほど価値があって大きなものなのか、騙した方は想像もつかないかもしれません。
自分も騙されたのだから損を取り戻したいという、そんな思いが強くなると、人は少しずつ相手の苦しみを理解することができなくなってしまいます。
自分さえ良ければいいといった思いが、友達だから信じたという被害者の気持ちを裏切ってしまうのです。
軽い気持ちで詐欺に加担する若者
国民生活センターの調べによると、投資詐欺におけるマルチ勧誘の相談件数は年間約1万件あり、そのうち約半数が20代からの相談だということです。
特に大学生や、社会人になったばかりの若者が、狙われるケースが増えています。
今回、Aさんを騙した同級生も、最初は被害者だったのかもしれません。
自分が騙されお金を失い、取り返したいと言ったそんな気持ちが、今度は人を勧誘する側へ回ってしまい、自分が味わった不幸を相手に押し付けることになってしまったのです。
本当に怖いのは“心”が壊れること
他人を騙す恐ろしさは、お金を盗むことだけではありません。
被害者から、「人を信じる力」を奪ってしまうことです。
信じていた友人や頼れると思っていた知人に裏切られた時、人はお金以上に深く心を傷つけられてしまうのです。
「もう誰も信じられない」
そんな気持ちを抱えたまま、その人は長い人生を苦しむことになるのです。
詐欺は、優しさや思いやりといった、人間の純粋な心まで壊してしまうということです。
「自分も騙されたから」
「自分だけ損をしたくないから」
そんな理由で今度は騙す側にまわれば、自分と同じような不幸な人を作ってしまうことになります。
もし、自分の子供や孫が、簡単に稼げるから人を紹介するだけといったそんな話に巻き込まれそうになった時は、その先に、傷つく人がいるということをぜひ伝えてあげてください。
詐欺とは、お金だけではなく、人の心の傷を連鎖させていく犯罪なのです。
だからこそ、自分が苦しい思いをしたのなら、そこで連鎖を止めなければなりません。
自分も騙されたのだから仕方ないということではなく、同じ苦しみを他の人に味わわせてはいけないということです。
それに、他人を騙して不幸にして得たお金で、本当に幸せになった人はいません。
それは、長い歴史の中で、何度も繰り返されてきたことだからです。
子供や孫に話してもらいたいこと
このブログを読んでくださっている人は高齢者の皆さんです。
だから私は、今こそ家族で話してほしいことがあります。
もちろん、詐欺をしている人間に、罪の重さを知りなさいと言っても届かないかもしれません。
しかし皆さんには、子どもや孫へ大切なことを伝える責任があります。
もし、友達から投資の話を持ちかけられたら、すぐに断って相談してほしいということを言ってください。
それと、自分が騙す側に回れば、相手を不幸にするということで、それは自分の人生に汚点を残すことになると話してもらいたいのです。
「断りにくいから」「友達だから」そう思って関わってしまうことが、実際に友人や知人を勧誘したことで、人間関係が壊れたり、金銭トラブルへ発展したケースも数多くあります。
結果として、時には自分自身が犯罪へ加担してしまうことになるのです。
だから、子供や孫がそのようなことに巻き込まれていたら、一人で抱え込まないで家族に相談してほしいということを話していてもらいたいのです。
そんな家族の会話がある家庭がとても大切なのです。
私は、詐欺をなくす一番の方法は、人を思いやる心を、家族の中で伝えていくことだと思っています。
その小さな会話が、いつか大切な人を守る力になっていくと思っています。
もし、投資トラブルなどのマルチ商法に関わって騙されそうになったら、

国民生活センター消費者ホットライン(局番なし188)に電話して相談してみてください。
専門家が相談に乗ってくれます。