「このプレートを取り付けるだけで電気代が安くなります」 そんな説明を聞いたら、あなたはどう思われるでしょうか。
電気料金が上がり続ける今、「少しでも安くなるなら試してみたい」と思うのは、ごく自然なことかもしれません。
実際に、分電盤や電気メーターに金属製のプレートを貼るという商品が全国で販売され、多くの人が購入しました。
ところが、この商品は後に、大きな詐欺事件へと発展していきます。
ここで注目してもらいたいのは、問題になった詐欺は「プレートの節電効果」そのものではなかったのです。
「この事業に出資すれば高い配当がもらえる」という投資の部分が詐欺にあたるということでした。
この事件の裏には、昔から多くの投資詐欺で使われてきた「ポンジスキーム」と呼ばれる仕組みが隠されていたのです。
ポンジスキームとは何か
ポンジスキームとは、「出資するだけで毎月配当がもらえる」という甘い言葉で誘う詐欺の手口です。
実はこの名前、1920年代にアメリカで大規模な投資詐欺を行った「チャールズ・ポンジ」という人物に由来しています。
100年以上前の古い手口ですが、今でも商品や形を変えて何度も繰り返されています。
その仕組みは、驚くほど単純です。
まず、詐欺師は「詐欺に使う商品を説明して、この商品の販売に出資すれば高い配当が出ます」と言って投資家を集めます。
そして、出資した人に対して、最初は本当に配当を支払うのです。
ここで配当を受け取った多くの人は、「本当に儲かる話だったんだ!」と完全に信じ込んでしまいます。
しかし、その配当は事業で得た利益などではありません。
後から参加した人たちの出資金を、前の人たちへの配当として横流ししているだけなのです。
つまり、利益が出ているように見せかけて、実際には新しい出資者のお金がぐるぐる回っていたに過ぎません。
そのため、新しい出資者が増えている間は配当が支払われますが、参加する人が減った瞬間に状況は一変します。
配当に回すお金が底をつき、仕組みそのものが一気に崩壊してしまうのです。
最後には、会社が行き詰まって倒産したなどと言って、配当金は支払われずに詐欺師は姿を消し、集めた大切なお金は二度と戻ってくることはないということです。
立派なカタログと著名人で安心感を作る
今回の事件でポンジスキームに使われた商品は、分電盤や電気メーターに金属製のプレートを取り付けるだけで、電気の流れが整い節電効果が期待できるというものでした。
電気料金の値上がりが続く中で、「少しでも電気代が安くなるなら」と興味を持つ人がいたのは、決して不思議なことではありません。
「この事業に出資すれば配当も受け取れますよ」という甘い投資話が加わることで、多くの人が疑うことなく信じ込んでしまうのです。
さらに、豪華なパンフレットや有名人が推薦する広告を見せられたら、この投資話は儲かるかもしれないと思ってしまうのは仕方ないことなのです。
詐欺師たちは、立派なカタログや著名人の名前を使って「見せかけの安心感」を作り出し、出資者を集めることこそが、ポンジスキームという詐欺の手口ということになります。
投資という甘い罠
この詐欺の特徴として、そもそも、そのプレートに本当に節電効果はあったのだろうかということは問題ではありません。
私たちが注目すべきなのは、商品は見せかけでしか過ぎないからです。
電気代を安くする商品、水を美味しくする商品、健康によいとされる商品など、その効果が本物かどうかということよりも、いかにも売れそうかもしれないと思わせることが、この詐欺としては重要なのです。
だから、この詐欺に引っかからないためには、商品を見て判断するというよりも、お金の流れを確認することが大事なことといえます。
配当金は一体どこから生まれて、どのように支払われるのかというお金の仕組みなのです。
配当金の仕組みを考える
ポンジスキームという詐欺を見分けるためには、集めたお金で何をしたいかを調べる必要があります。
出資金で、新しい機械を買うとか、その機械で良い商品を作って売り上げを上げたいなどというはっきりした計画がなけれななりません。
しかし詐欺の場合、この「儲けを生み出す実態」があまりはっきりしていないのと、新しい価値を何も生み出していないのに、高額配当をうたっている点です。
「毎月10%の配当が出ます」と言われたとき、じゃあ、その配当金は一体どうやって稼ぎ出した利益から出ているのかという、その仕組みを考えることが、投資においては大事なことになります。
その仕組みがはっきりしないのに配当が支払われる場合は、お金を回しているということであると思って下さい。
信頼している人から勧められても立ち止まる
ポンジスキームが本当に厄介なのは、見知らぬ詐欺師が直接近づいてくるとは限らないことです。
「私はこれで儲かったから、あなたにも教えたい」そんな言葉とともに、知り合いから紹介されることです。
しかし、紹介してくれたその人自身も騙されているというケースが非常に多いのです。
先ほどお伝えしたように、ポンジスキームは最初のうちだけは実際に配当が支払われます。
そのため、紹介者もまったく悪気はなく、「本当に儲かる素晴らしい話だ!」と思い込んでしまっているのです。
だからこそ、これだけは心に留めておいてください。
その人を信じることと、その投資話を信じることとは別の話と考えてください。
どれほど信頼している長年の友人や大切な人のすすめであっても、「かならず儲かる」「高利回りが約束されている」という話が出てきたら、決してその場でうなずかず、一度立ち止まることが大切ということです。
ポンジスキームという詐欺に引っかからないために
立派なカタログ、 著名人を使った広告、堂々とした会社案内などを見せられると、「こんな立派な会社が詐欺をするはずがない」と、つい心を許してしまいそうになります。
しかし、会社が本物らしく見えることと、その投資話が本物であることは全く別の話なのです。
100年前のチャールズ・ポンジから現在まで、ポンジスキームは姿を変えながら何度も繰り返されてきました。
使われる商品は時代によって変わりますが、基本の仕組みは決して変わらないのです。
だからこそ私たちは、商品の効果を一生懸命に見抜こうとする必要はありません。
騙されないために見つめるべきなのは、「その配当金は、一体どこから生まれているのか?」という一点だけを考えるのです。
このことが、はっきりしなかったり納得するものでなかったりすれば、一度立ち止まって考えてみることです。
ポンジスキームという詐欺は、出資金を配当として回しているだけだからです。
「出資すれば儲かります」「高い配当が受け取れます」「高利回りが期待できます」
もし、相手からこんな言葉が出てきたら、強く警戒して立ち止まって考えて下さい。
このことが、あなた自身と大切な財産を守ることになります。