【最新オレオレ詐欺の手口】「お母さん、俺だけど」その声はAI音声で作られた息子の声でした

台所で昼食の準備をしていたMさんの家の電話が鳴りました。

電話の画面には「息子」と表示されています。

「お母さん、俺だけど」

聞き慣れた息子の声でした。

少し慌てた様子で、一方的に早口で話し続けてきます。

「実は今日、会社で大きなミスをしてしまって、取引先に損害を与えてしまったんだ。今日中に200万円用意しないと大変なことになる。お母さん、助けてもらえないかな」

Mさんの心臓が高鳴りました。

「あなた、大丈夫なの?どんなミスをしたの?」

「詳しいことは後で話すから、今すぐ用意してほしいんだ。会社の上司も一緒なので電話を代わるから」

Mさんは疑いませんでした。

なぜなら——その声は、どこからどう聞いても息子の声だったからです。

巧妙化する詐欺の手口

しかしこの電話は、息子本人ではありません。

息子の声を完璧に真似たAIの音声でした。

それに、着信画面に「息子」と表示されていたこともあり、Mさんは完全に信じてしまったのです。

普段から怪しい電話がかかってきた場合は、合言葉で確認しようと決めていたのですが、それを思い出す余裕すらなく、詐欺師のストーリーにはめられていきました。

ナンバーディスプレイを契約していると発信者番号が出ます。

しかし、詐欺師は「発信者番号偽装」という手口で電話をかけてきているのです。

この手口は、海外の通信サーバーなどを経由することで、発信元のシステム設定を自由に変更し、息子の電話番号になりすましてかけることができます。

それによって家の電話機には、その偽装された番号が電話帳のデータと照らし合わされたために、電話機の画面には「息子」と表示されてしまったのです。

AIが声を真似る時代

さらに恐ろしいのは、電話から聞こえてきた声が間違いなく息子の声でした。

なぜ、そこまで完璧に息子の声を真似ることができたのでしょうか。

実は犯行グループは、息子さんに電話をかけていて、その録音した声を使って、AIを使って本人そっくりの声を作り出していたのです。

現在のAI技術は恐ろしく進歩しており、わずか数秒の音声データさえあれば、その人の声を完璧に再現することができます。

しかも、声のトーンだけではありません。

話し方のクセや笑い方までも忠実に再現することができ、長年一緒に暮らしてきた家族であっても、電話越しにそれがAIの作った偽物だと見破ることは不可能に近いのです。

なぜ声だけで信じてしまうのか

Mさんが電話の声を息子だと疑わなかった理由は、注意力が足りなかったからではありません。

疑う余地がないほど、息子の声に似ていたからであって、長年聞き慣れた家族の声は、脳が無意識に「本物だ」と判断してしまうのです。

それに、まさか声まで偽装できるとは思ってもみなかったから、Mさんはためらわずに息子であるという認識を持ってしまったということです。

さらに、その時は自分一人きりという状況から、電話口で子どもが窮地に立たされていると思った時には、冷静さという判断はどこかにいってしまっていたということが本当のところです。

従来のオレオレ詐欺との決定的な違い

オレオレ詐欺といえば、「オレだけど」と電話をかけてくる古くからの詐欺です。

すっかり古典的な手口となり、今どき、そんな手口で騙される人なんているのと思われるほど世間に認知されてきました。

しかし、この古典的な詐欺は決して消え去ったわけではありません。

私たちの気づかないところで、恐ろしい進化を遂げていたのです。

詐欺の手口は、大きく3つの世代に分けられます。

  • 【第一世代】ただ息子を名乗るだけのオレオレ詐欺 |これは「声が違う」というだけで、簡単に見破ることができたのですが、それでも騙される人がいました。
  • 【第二世代】声を似せたり、風邪を引いたなどととごまかす | 少しだけ巧妙になり、相手が不思議がることに対して似せてきたり言い訳をしたりするのですが、「やっぱり声が違う」と違和感に気づくことがありました。
  • 【第三世代】AIが本人の声を完璧に生成する| 息子の声色から話し方のクセまで、AIを使用することで忠実に再現し、もはや「声」だけでは絶対に見破ることができない時代になってきたのです。

声だけで信じないための三つのルール

巧妙化するAI音声詐欺から身を守るためには、今すぐ家族で決めておいてほしい三つのルールがあります。

① 家族だけの「合言葉」を決めておく 

これは絶対に守るようにしてください。家族しか知らない具体的な質問を用意するだけで、AIによる偽者の声出会っても見破ることができ、詐欺を完全に防ぐことができるからです。

② 必ず一度電話を切ってから、こちらからかけ直す

一度電話を切ってから、ご自身の電話帳に登録されている息子の番号へかけ直してください。こちらから発信すれば偽造した詐欺師の番号にはつながることは絶対にありません。そのことで、電話が息子かどうか確認することができます。

③ 「お金の話」が出たら、その場では絶対に動かない 

電話口で少しでもお金の話が出た瞬間、それがどんなに焦る内容であっても、その場では絶対に決断しないと心に決めておいてください。すぐに行動せず、誰かに相談することで冷静さを取り戻すことができます。

Mさんに起こった結末

その後、電話は「息子の上司」と名乗る男に代わりました。

「お母さん、200万円用意して今日中に取引先へ謝罪に行けば、なんとか穏便に済ませることができます」

パニックに陥っている親からすれば、お金さえ工面すれば、息子が会社に迷惑をかけずに済むと思い込んでしまいます。

しかし、いくらなんでも200万円という大金をすぐに用意することなどできません。

そこでMさんが「もう一度、息子に代わってほしい」と頼むと、上司の男は「息子さんは今、先方に謝罪に向かっているのでここにはいません」と告げてきます。

実は、AIの音声は、あらかじめ先に編集して用意されたものなので、会話をすることはできないのです。

上司の男は、「このままでは息子さんは責任を取って会社を辞めなければなりませんよ」と、半ば脅すような言葉を投げかけてきました。

そして、すかさずこう提案してきたのです。

「50万円なら、なんとか今すぐ用意できませんか? 残りは私が責任を持って工面しますから」

親の焦りにつけ込み、味方であるかのように装う巧妙な手口です。

Mさんが絶望的な気持ちで電話を握りしめていたところに、嘘みたいに玄関のドアが開き、息子本人が家に帰ってきたのです。

「体調が悪いから、会社を早退してきた」

目の前にいる息子の言葉に、Mさんは何が起きているのかまったく理解できず、頭が真っ白になってしまいました。

偶然息子が帰宅したことで、結果的にすべてが詐欺であると見破ることができたのですが、もしあのまま息子が帰ってこなければ、Mさんは間違いなく50万円を騙し取られていたことだと思います。

新しい知識こそ防犯対策になる

今回ご紹介したように、昔からあるオレオレ詐欺は、AI技術を悪用して「声」だけでは絶対に見破れないほど恐ろしいものに進化を遂げています。

詐欺の手口が新しくなっている以上、私たちも知識の備えを新しくしておく必要があります。

もはや声も電話番号も本物そっくりに作りかえられる時代であるということを知ることで、オレオレ詐欺で騙されることを防ぐことができます。

このように、世の中の詐欺が進化していっています。

私たちの知識も常にバージョンアップしておかなければ、簡単に騙されていってしまうのです。

そして、何よりも最新の詐欺から身を守る最強の防衛策は、家族間で合言葉を決めておいたり、誰かに相談できる人が近くにいるという、騙されないための工夫が大事なことということになります。

近くに相談相手がいない場合は、怪しいと思ったら国民生活センターの窓口である、局番なしの188に電話してください。

専門家が相談に乗ってくれます。

今回の記事に書かれているように、3つのルールを習慣づけることで、進化したオレオレ詐欺から身を守ることをしてください。