ある日の午後、玄関のチャイムが鳴りました。
出てみると、宅配業者がAmazonの段ボール箱を持って立っていたのです。
60代のAさんが首をかしげたのは、最近、Amazonで何か注文した記憶がないからです。
「何かの間違いじゃないかしら」と思いながらも、自分の名前と住所が書かれた荷物を受け取りました。
箱を開けてみると、中に入っていたのは安価なスリッパでした。
誰かが間違えて送ってきたのか、それともAmazonが間違えたのかと思ったのです。
Aさんは困惑しながらAmazonのカスタマーサービスに問い合わせました。
Amazonに関わる不可解な事案①
Amazonが説明するには、代金はすでに第三者によって支払われており、使っても処分しても構わないという返事でした。
そして、発注した者は分かっているが、個人情報保護のルールがあるため、誰なのかまでは教えられないと言われました。
Aさんはすっかり気味が悪くなり、手元に残されたこの荷物をどうすればいいか途方に暮れたのです。
何の目的で何のために
これはブラッシング詐欺といって、あなたの住所を使って偽の商品の発送を行い、ある商品に対してあなた名義で高評価レビューを投稿するという手法です。
これは、商品の販売実績を上げることと、高評価の買い物をしてもらおうというのが狙いということのようです。
つまり、悪徳出品者がAmazonでの評価を不正に上げるために、まず偽のアカウントを作ります。
そしてどこからか入手した個人情報を使って、あなたの住所に安価な商品を送りつけます。
商品が届いたという記録ができると、偽アカウントを使って、評価を上げたい商品のレビューを投稿するというのが目的です。
一見すると害はなさそうに思えますが、この詐欺に遭った場合は個人情報が漏れている可能性が高く、サイバー攻撃や身元情報の詐欺に発展する危険性があるのです。
届いた商品はどうすればいいか
実はこのブラッシング詐欺について、Amazon側も厳しく監視し、悪質業者のアカウント停止や法的措置などの対策を行っています。
しかし、詐欺の手口も日々巧妙化するといった、いたちごっこの状態であるため、巨大なシステムの中で完全に防ぎきれていないのが実情のようです。
騙されてお金を取られたということではないので、このことについては大きく報じられることがないのです。
Aさんには受け取って使っても、法律上問題ないことなのですが、気味が悪いので商品はそのまま処分してしまいました。
Amazonに関わる不可解な事案②
Amazonでの買い物には、Amazon自身がメーカーから仕入れて販売している商品のほかに、「マーケットプレイス」と呼ばれる一般の出品者が販売できる仕組みがあります。
近年、この仕組みの中で不可解な事件が報告されています。
それは、注文した商品がいつものAmazonの箱で届いたにもかかわらず、開封してみると中身が偽物や粘土などにすり替えられているという悪質なケースです。
商品は本物そっくりにパッケージングされているため、手元に届いて実際に箱を開けるまで、すり替えられていることに全く気づくことができません。
特に、高級ブランド品や人気のゲーム機など、高額な商品を注文した際に騙される被害が多く報告されています。
Amazonから送られる偽商品
なぜわざわざ粘土などが詰められているかというと、その最大の理由は、Amazonの厳しい重量チェックをすり抜けるためです。
Amazonの巨大な物流倉庫では、商品の発送や管理をバーコードだけでなく、「重さ」でも機械的にチェックしています。
もし中身がないまま空箱のまま発送しないためで、登録されている本来の重さと違う場合は、エラーと検知してしまうためです。
そこで犯人は、本物の商品とぴったり同じ重さの粘土を精密に計って詰めることで、Amazonの検査システムを正常な商品としてすり抜けているのです。
さらに悪質なのは、彼らの逃げ足の早さです。
商品を受け取った購入者が箱を開けて、騙されたと気づく頃には、詐欺グループはすでにAmazonから支払われた売上金を引き出し、自分たちのアカウントごと消去して跡形もなく逃亡してしまっています。
被害を防ぐための「見分け方」
このような悪質なすり替え被害を防ぐためには、購入ボタンを押す前のちょっとした確認がとても重要です。
買い物をするときは、以下のポイントを必ずチェックするようにしましょう。
1. この詐欺の事案は、Amazon本体が販売・発送する商品は起こらないく、マーケットプレイスと呼ばれる第三者の出品者から購入した場合に集中しています。
2. 出品者の「評価」と「レビュー」を必ず確認するようにします。
極端に安い商品や、聞いたことのない業者が販売している場合は要注意が必要です。
また、評価の数が極端に少ない出品者や、短期間に不自然な高評価が集中している出品者も避けるのも対策としては有効です。
それでも、もし偽物が届いたらAmazonのカスタマーサービスに連絡して返金を求めてください。
Amazonには購入者を守る保護制度があり、偽物が届いた場合はほとんどのケースで返金対応をしてもらえます。
また、悪質な出品者をAmazonに報告することは、ご自身の返金だけでなく、他の誰かが新たな被害に遭うのを防ぐことにもつながることになります。
Amazonに関わる不可解な事案③
最近、ネットショッピングの被害で特に注意が必要なのが、届いた商品と一緒に入っている案内文に仕掛けられた罠です。
ダンボールを開けると、商品と一緒に丁寧な「サンキューカード」や取扱説明書が入っていることがあります。
そこには、目を引くような言葉とともに、QRコードが印刷された案内文です。
「ご購入ありがとうございます!このQRコードを読み取ってアンケートに答えると、1,000円分のギフト券をプレゼント!」 「商品の保証期間を永久に延長するには、ここをスキャンして登録してください」
商品が手元に無事に届いた安心感と、「ギフト券がもらえる」という魅力的な言葉に誘われ、ついスマートフォンでQRコードを読み取ってしまいたくなるかもしれません。
しかし、ここに非常に危険な罠が潜んでいるのです。
文章に潜むQRコード詐欺
QRコードを読み取った先で待っているのは、Amazonそっくりの偽サイト(フィッシングサイト)です。
指示されるがままに進むと、クレジットカード情報を盗み取られたり、LINEの友だち登録を促されて怪しい投資詐欺グループに引き込まれたりする危険があります。
多くの人は、見知らぬ不審なメールには警戒します。
しかし、自宅に届いた荷物の中に、きれいに印刷された案内文が入っていると、警戒心を解いてしまうことから、詐欺グループはその心理のスキを狙ってきます。
詐欺に合わないためのシンプルなルール
このような手口を知ると、一体何を信じていいかわからないと不安になるかもしれませんが、決して恐れることはありません。
ご自身を守るために、次のルールを一つだけ決めておいてください。
- Amazonに関する手続きや確認は、同封された手紙からではなく、必ず『Amazon公式アプリ』や公式サイトから直接行うようにしましょう。
どんなにお得なキャンペーンが書かれていても、チラシのQRコードは絶対に読み取らないことです。このシンプルなルールを一つ徹底するだけで、安全なネットショッピングを楽しむことができます。
Amazonに関わる不可解な事案④
身に覚えのない荷物が突然、自宅に「代金引換(代引き)」で届くという事案です。
実は今、このような強引な手口で直接お金を騙し取ろうとする「代引き詐欺」が横行しているということです。
詐欺グループは、何らかの方法で入手した名簿などの住所と名前を使い、勝手に商品を代引きで送りつけてきます。
送られてきた人が、間違って代金を支払ってしまうのを狙っているのです。
一人暮らしをしている場合でも、突然荷物が届くと、離れて暮らす家族の誰かが送ってくれたのかもしれないと、代金を払ってしまうことがあります。
代引き詐欺の防衛策
身に覚えのない代引きの荷物が届いた場合、絶対にお金を払わないようにしましょう。
クレジットカードの不正利用であればカード会社が補償してくれる場合がありますが、代引きの場合は一度支払ってしまうと、実質的にお金を取り戻すことは不可能だからです。
宅配業者に詐欺だったから返金してと頼んでも、宅配業者はお金を受け取った場合、宅配業者には返金する権限がないからです。
デタラメな住所を書いた詐欺グループと直接連絡をとることもできないため、代引きで受け取った場合は、泣き寝入りするしかないのです。
この代引き詐欺の最も簡単で確実な対処法は、注文したかどうか確かめて、頼んでいない場合は「受け取り拒否」をするようにしましょう。
配達員の方に「注文した覚えがありません。受け取りを拒否します」と伝えれば、荷物はそのまま送り主に返送してもらえます。
この対応によってペナルティを受けたり、後から支払い義務が生じたりすることは一切ありません。
不審な代引きの荷物は、絶対にその場で受け取らないことを徹底してください。
あなたの個人情報が漏れている
これら四つの事案には共通することがあります。
注文していないのに自分の名前と住所が書かれた荷物が届いた場合、どこかから個人情報が漏れている可能性があります。
すぐにサイトから、Amazonのパスワードを変更し、登録しているクレジットカードの明細を確認してください。
そして、四つの事案のどれも、Amazonのカスタマーサービスに報告することが大切です。
報告することで調査が行われ、悪質な出品者のアカウントが停止されることがあり、あなたの報告が次の被害者を防ぐことにつながるからです。
これらのことがあるという知識を得ることは、いざという時に詐欺に巻き込まれないことにつながります。
Amazonを安全に使い続けるために
Amazonは、私たちの生活になくてはならない大変便利なサービスです。
しかし残念ながら、その圧倒的な便利さを悪用しようとする悪い人間が存在するのも事実です。
今回お伝えした「ブラッシング詐欺」「中身のすり替え」「QRコード詐欺」「代引き詐欺」といった、これらの手口を知っておくだけで、万が一ご自身の身に不可解なことが起きても、決して慌てることなく冷静で正しい対処ができるはずです。
そして、あなたの名前と住所宛に、注文していない荷物が勝手に届いたとしたら、それを単なる間違いだろうと軽く見過ごさないでください。
それは、どこかであなたの個人情報が漏れてしまっているという危険なサインかもしれないからです。
Amazonのパスワードは定期的に変更することや、二段階認証をしっかりと設定するなど、日頃からのチェックを行うことが何よりの防衛策となります。
詐欺の手口は日々進化し巧妙になっています。
しかし、正しい知識をしっかりと身につけておけば、決して恐れることはありません。
詐欺にかからないように、これからも心穏やかに慎重に、安全で便利なネットショッピングを楽しんでください。