2億円を騙し取られたロマンス詐欺、1500万円を失った偽警察官詐欺、宝くじが当たったと言われ1000万円を騙し取られた詐欺……。
こうしたニュースを見るたびに、多くの人がこう思います。
「なぜ、あんな怪しい話を信じてしまうのか」 「普通なら、おかしいと気づくはずなのに」 「自分なら絶対に騙されない」
そう思うのは、私たちが客観的に見ているからで、詐欺の手口が透けて見えているからです。
しかし、騙された人たちは、実は私たちと全く違う別の世界に入り込んでいたのです。
詐欺師は嘘をつくのではなく「別の現実」を作り上げる
詐欺師の本当の恐ろしさは、単に巧妙な嘘をつくことではありません。
被害者を「別の現実」の中に引き込んでしまうことです。
その現実の中では、見ず知らずの口座にお金を振り込むことが正しい判断とされたり、自分の身を守る正しい行動として、警察官を名乗る人物の指示に従うことが当然のことのようになってしまうのです。
外から見れば明らかにおかしいことでも、当事者には全くおかしいと思えないというのは、詐欺師の手口として、「別の現実」に迷いこまされたからということになります。
別の現実へ引き込むテクニック
ある日突然、あなたの電話が鳴り、こんな言葉が飛び込んできます。
「あなたの口座が、犯罪に使われています」
その一言で、今まで続いていた平穏な日常は一瞬にして吹き飛んでしまいます。
「口座が危ない」「今すぐ対処しなければ家族に迷惑がかかる」
このような恐怖と焦りが押し寄せてくるのです。
あるいはロマンス詐欺なら、夢のような興奮と甘い期待が心を満たします。
人間は、恐怖や過度な期待で感情が大きく揺さぶられたとき、頭の中で「冷静に考える」という機能がほぼ止まってしまうと言われています。
気づけば彼らの用意した別の現実へと足を踏み入れてしまっているのです。
外との接触を遮断する
さらに詐欺師は、必ずといっていいほどこう言います。
「このことは、他の人にもご家族にも絶対に話さないでください」
これも、詐欺師の重要なテクニックの一つで、家族や友人に相談されれば、「それ、詐欺じゃないの?」と一瞬で魔法が解けてしまうからです。
被害者を周囲から完全に切り離し、自分だけを信じるように仕向けることで、別の現実はより強固なものになってしまうのです。
映画を見ているのと同じ
こうした詐欺の構造は、私たちが、映画に夢中になっているときの心理とよく似ています。
映画を見ているとき、私たちは画面の中の世界を現実のように感じ、主人公と一緒に泣き、笑い、ハラハラします。
そして、誰かにポンと肩を叩かれて初めて、「ああ、自分は映画を見ていたんだ」とハッと現実に戻ります。
詐欺師が作り上げる世界も同じです。
一度その物語に引き込まれると、自分ではなかなか抜け出せません。
ロマンス詐欺なら「この人は私だけを見てくれている」という甘い物語の主人公になります。
宝くじ当選詐欺なら「人生が変わる瞬間」という感動的な場面の真っ只中にいます。
しかし、映画が終わったのと同じように「騙された」と気がついた時には、消えたお金と激しい後悔だけが残るのです。
このように、詐欺師たちは、冷静に考えたらおかしいと思えることでも、その中に引き入れることで、映画を見ている時と同じように、抜け出すことができない錯覚の世界へと閉じ込めてしまうのです。
騙される方が悪いという考え方
「宝くじが当たりました」
そんな話を信じて、1000万円を振り込んでしまったという事件を聞くと、「そんな話に騙される方が悪い」と思ってしまう人がいるかもしれません。
なぜなら、冷静に考えればおかしいと分かる話だからです。
だからこそ、自分なら絶対に騙されないとそう感じてしまうのです。
しかし、それは私たちが今、客観的な立場から見ているからといえるからでもあります。
実際に詐欺にかかると、詐欺師は相手を不安にさせたり、焦らせたりしながら、冷静に考えることを奪っていきます。
そして気がつけば、本人も気づかないうちに、詐欺師が作り上げた別の現実の中に引き込まれているのです。
自分なら絶対に騙されないという過信の危険性
詐欺のニュースを見るたびに、「自分なら絶対に騙されない」と思うかもしれません。
あんな見え透いた嘘で騙される方が悪いという考えの中で、「私は大丈夫」という安心感は、心のどこかに油断を生み、詐欺師が入り込むため隙を与えてしまいます。
詐欺に騙されてしまうのは、知識のない人ばかりではありません。
むしろ、真面目で責任感が強い人、しっかりと人生経験を積んできた賢い人であっても、一瞬の不安や焦りで巧妙な罠に落ちてしまう可能性があります。
本当の防衛策は、自分を過信することではありません。
「自分だって、いつ騙されてもおかしくない」そのように思う気持ちこそが、詐欺師を遠ざける一番の力になるのです。
知ることが現実を守る力になる
詐欺師が作り上げる「別の現実」は、とても巧妙です。
しかし、その世界にも一つだけ弱点があります。
それは、事前に手口を知ることで、別の現実に引き込まれにくくなるからです。
映画を見ている時、私たちは物語の世界に没頭していますが、ストーリーを事前に知っていたり、映画を見ている最中に、誰かに話しかけられると、すぐに現実の世界に戻ってしまいます。
詐欺も同じです。
手口を知ることは、詐欺師が作り上げた世界を冷静に判断することができるからです。
そして、一人で判断せず誰かに相談することは、詐欺師の作り上げる別の現実から、あなたを引き戻す大きな力になるのです。
詐欺によって作られた別の現実に入り込まないようにすることが、あなたを詐欺から守る知恵となるのです。
詐欺から自分の人生と資産を守るのは、詐欺の手口を知ることが、あなたの人生は守られるということになります。
詐欺師が一番恐れるのは、あなたが詐欺についてよく知っていることであり、そして何かあればすぐに相談できる人がそばにいるということなのです。
相談できる人がそばにいない場合は、国民生活センター(局番なし188)や警察の相談窓口(#9110)に電話をかけて相談してください。